Case8:特発性乳び胸という病気と院長不在のお知らせ
症例報告(高橋雅弘)
腸管から吸収された脂肪を含む白色のリンパ液が胸腔内に貯留する病気。
原因としては心不全や腫瘍でたまることがありますが、時として原因不明なことがあり、これを特発性乳び胸と診断します。
↓こんな液体が胸に溜まり呼吸困難を示します。

この病気は治療が難しく、これで完璧に治りますとお約束できる治療が存在しません。
いくつかの手術を組み合わせることで成功率が上昇すると言われています。
柴犬 2歳齢です。
(柴犬は乳び胸の好発犬種です。)
当院では1)胸管結紮術(開胸して胸管を目視にて結紮)、2)心膜切除(心臓の周りの膜を切除)、3)乳び槽切開術(お腹の中にあるリンパ液貯留した部位を切開)を同時に実施しております。
まずはお腹の中のリンパ節に胸管が見えるようにインドシアグリーンという色素を注射します。
↓クリックすると写真が大きくなりますが、血がだめな方はクリックしないでください!!

見えない胸管がインドシアグリーンの注入によって緑色の胸管が見えるようになります。
↓クリックすると写真が大きくなりますが、血がだめな方はクリックしないでください!!

剥離して胸管を露出させます。
↓クリックすると写真が大きくなりますが、血がだめな方はクリックしないでください!!

胸管をチタンクリップや糸で結紮します。胸管の分枝もあるため複数箇所結紮します。
↓クリックすると写真が大きくなりますが、血がだめな方はクリックしないでください!!

その後心膜を切除します。
↓クリックすると写真が大きくなりますが、血がだめな方はクリックしないでください!!

最後はお腹に戻って乳び槽を切開して終了です。
↓クリックすると写真が大きくなりますが、血がだめな方はクリックしないでください!!

この手術はお腹をあけて胸をあけてと非常に負担の大きな手術です。
乗り越えてくれました!!
1週間乳びがお腹と胸に貯留しましたが、術後7日目にぴったり胸水貯留がなくなりました。
レントゲン写真にて胸管を結紮したところはチタンクリップが見えます(矢印)

本ケースはうまくいきましたが、同じように手術をしても治らない動物たちがいる難しい病気です。
なんとか治せるようにしたいものです!!
最後に院長不在のお知らせ
2016年9月21日(水)終日と9月23日(金)の午前中
何卒ご了承の程よろしくお願いします。