Case5:雌犬の尿道移行上皮癌

症例報告(高橋雅弘)

高橋ペットクリニック 内視鏡ケースより

13歳齢 犬 雌
尿がでないを主訴に来院。

尿が出ない場合は、尿道閉塞をまずは考えます。それらの原因は尿道結石、尿道の外部からの圧迫、尿道の変位(特に会陰ヘルニアなど)そして尿道腫瘍(良性あるいは悪性)を考えます。今回は雌なので前立腺疾患や会陰ヘルニアなどの雄の病気は考えにくいです。
その他に実は尿は出ているけど、何回も排尿して実際はでているが、出ていないように感じる(膀胱炎でよくある症状)も考えます。この状況で超音波検査を実施してみると膀胱内に尿の貯留が認められません。

今回の膀胱超音波検査では、膀胱内に大量の尿貯留が見られ、やはり尿が出ていないようです。
膀胱内に結石や腫瘍は認められませんでしたが、尿道に異常がみられました。尿道の肥厚と尿道粘膜の石灰化でした。

ここで内視鏡の登場です!!
Case4では鼻の中に内視鏡をいれましたが、今回は尿道に内視鏡を挿入します。

全身麻酔下で尿道および膀胱の検査を実施します。



尿道鏡検査所見です。
尿道の粘膜は不整に増殖し出血しやすく、狭窄していました!!
尿道粘膜の生検による病理組織検査では、移行上皮癌と診断されました。

尿道移行上皮癌の治療は難しいです。治療に関してはいろいろ複雑な話になりますので、ここでは語り切れません。

今回は尿道路を確保するという治療として尿道バルーンカテーテルを設置しました。

尿道の病変を確認することは非常に難しいです。内視鏡は尿道病変を描出できる最高のツールです。
しかし問題がまだまだあります。雄では尿道が狭いためこのクオリティーの高い画像が描出できないことと、3kg以下の雌においても同様のことが言えます!!